本のやま4
Posted on | 2月 12, 2010 | No Comments
「出て行け!」たった一言、自分の耳ががんとする程度怒鳴ったきり、私も二の句が継げなければナオミも何とも返辞をしません。二人はあたかも白刃を抜いて立ち向かった者がピタリと青眼に構えたように、相手の隙を狙っていました。その瞬間、私は実にナオミの顔を美しいと感じました。女の顔は男の憎しみがかかればかかる程美しくなるのを知りました。カルメンを殺したドン ホセは、憎めば憎む程いっそう彼女が美しくなるので殺したのだと、その心境が私にハッキリ分かりました。ナオミがじいッと視線を据えて、顔面の筋肉は微動だもさせずに、血の気の失せた唇をしっかり結んでたっている邪悪の化身のような姿。……………..ああ、それこそ淫婦の面魂を遺憾なく露した形相でした。 谷崎潤一郎 痴人の愛
すごい魅力的な女のひとのはなしでした。19歳の若い女のひとと30歳ぐらいの男のひとの変わった恋愛(変愛)なので30歳のぼくは、もう男目線でよんでました。随所にでてくる谷崎さんのフェチズムにはドキドキさせられました。
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